【感想】亀田俊和著「観応の擾乱:室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い」、中央公論新社、2017年。

 久々に良書に巡り合ったので簡単に感想文を書いてみました。10分くらいで殴り書きしたものなので誤字脱字、主語述語おかしくなってたらごめんなさい。

 具体的な内容に関しては日本史学の素人であるため立ち入らない。この本で貫かれている姿勢が素晴らしいと感じたためそれについて少々書いてみよう。本書で貫かれているのは「歴史学」である。著者はあくまでも一次史料に立脚しながら状況証拠的に論を組み立てる非常に歴史学的な方法を取っている。専門書でなく新書であるがゆえに脚注などはついていないものの、史料名が文末に括弧で示されるなど丁寧な記述が目につく。そのため「これがよく一般書として大ヒットしたなー」と素直に思ってしまった。全くこの時代の知識がない読者にとってはなかなか難しい内容になっているのではないだろうか。とはいえ私は本書を「歴史を学ぶ学部生必読の書」とすべきだと感じた。著者はあとがきにて観応の擾乱については本書が今後必読文献になれば(252頁)、と書いているが、日本史に限らず歴史学部の学生にとって学ぶべき歴史学的姿勢を本書から得ることができるはずだ。もちろん「筆者の想像であるが、、、」(111頁)と一歩踏み出す箇所も見受けられるが、これは新書という特性を十分に活かした良い記述だと感じた。

 さらに本書は「日本中世政治史の枠組みを作った巨人」(9頁)佐藤進一の論への反論でもあるが、これもまた非常に歴史学的な姿勢である。定説への挑戦を繰り返し歴史学は進展していく。また私の個人的な見解であり、日本史学においてこのようなことが言えるかどうかはわからないが(佐藤進一氏も名前を知っている程度でその業績については全くカバーできていない)、戦前・戦後期の歴史学は西洋においても(おそらく日本においても)多かれ少なかれ「目的論的」な姿勢が見受けられるように思われる。筆者が批判的に検討する、一方的裁許よりも理非糾明を上位に置き、それを進歩と結びつける日本中世研究者に見られる姿勢もまたこうした「目的論的」な立場、言い換えれば進歩史観と言えよう。こうした姿勢の見直しは少なくとも西洋の歴史研究においても20世紀後半からは進んでおり、一例を挙げるのであればフランス革命史のフランソワ・フュレなど代表的である。

 つらつらと書いてしまったが、間違いなく良書であり、歴史に興味のある読者であれば購入しても間違いないだろう。歴史学を志す大学学部生であれば尚更ぜひ読んで欲しい。

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